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家族信託を弁護士に依頼するメリットとは? 他の専門家とは何が違うのか

家族信託とは自分の老後や死後に備えて、財産を信頼できる家族に託し、管理処分を任せる財産管理制度のことをいいます。そのためご自身の財産を、誰にどれほど引き継がせるのかについては、「家族信託」という形で指定することができます。しかしながら制度の仕組みを正しく理解していない方が適切に信託の契約を結び、将来にわたりトラブルなく過ごすのは難し家族信託に関しては弁護士に依頼をするケースが多いです。

この記事で、弁護士に家族信託を依頼することで得られるメリットについて紹介し、他の各専門家との違いについても説明していきます。

家族信託を弁護士に相談・依頼するメリット

家族信託には「信託法」という法律が適用されるので、この法律にのっとった信託契約を作成しなければなりません。家族信託に関して弁護士に相談、依頼をしておくことで、法律に反することのない契約書を作成することが可能です。

また、どのように信託契約を定めるべきなのか、目的に沿ったアドバイスももらえますし契約書作成におけるミスも防ぐことができます。

さらに、弁護士だと信託契約の作成という部分的なサポートではなく関係人間のトラブル解決、訴訟問題にまで幅広く対応してもらえるというメリットもあります。

以下で各メリットの内容を詳しく見ていきましょう。

 

手続全般にかかる負担を軽減できる

家族信託に限った話ではありませんが、弁護士に事務を任せることで、手続にかかる負担を軽減させることができます。アドバイスをしてくれるだけでなく、様々な手続を代理で進めてもらうことができるからです。

 

基本的には、「信託財産を定める」「契約書を作成し、公正証書にする」「信託登記により信託財産を名義変更」「管理口座の開設」という流れを経て、信託財産の運用を始めることになります。

各ステップで多くの事務処理をしなければなりません。それも窓口に行けば良いというだけではなく、関係人との協議や公証人との打ち合わせ、金融機関との交渉なども行うことになります。単純作業ではなく、家族信託に関する知識を有していることを前提に臨機応変に対応していかなくてはならないのです。

 

そのため家族信託の利用を考えているご本人が直接対応しようとしても上手くいかないケースがありますし、手間も時間も相当にかかってしまいます。

 

一方、弁護士に家族信託の依頼をしておけば、一連の手続を任せられます。公正証書の作成など、手続の内容によっては依頼主の対応が必要になることもありますが、具体的に何をすれば良いのかアドバイスがもらえますし、心身ともに負担はかなり軽減されるでしょう。

 

信託契約の決め方を相談できる

家族信託の難しいところは、多様なパターンの中から目的に沿った方法を選ばなくてはならない点にもあります。

 

例えば家族信託を利用する目的としては以下のようなものがよくあります。

  • 自分の財産を2次的・3次的にも指定して承継させたい
  • 障害を持つ子どものために生活費を確保してあげたい
  • 認知症になっても適切な財産管理ができるようにしたい
  • 相続人間でトラブルが生じないように不動産の相続方法を指定したい

 

目的は人それぞれで、信託契約の在り方も人によって異なります。そのためどのように信託契約を締結したら良いのかわからず悩まれる方が多いのです。

 

これは法的な問題にもかかわるため、法律の専門家である弁護士に相談をすれば目的に沿った解決案を見出すことができます。「将来起こり得るトラブルやリスクを避けるため、どのような対策を打つべきか」といった視点も取り入れ、安心して信託契約を締結させられるでしょう。

 

契約書の不備を防げる

契約内容の方針が定まったとしても、その内容を契約書として正しく取りまとめることができなければリスクは残ったままです。

当事者も多く複雑な関係が構築される契約ですし、書面として残しておかなければトラブルに発展したときのリスクが大きくなってしまいます。そこで弁護士に頼んで契約書内容に問題がないかチェックしてもらうこと、実際に作成を任せることが大切です。

 

逆に契約書に不備があると、口座開設ができなかったり信託登記ができなかったり、最悪の場合には信託契約が無効になるおそれもあります。

 

訴訟から相続対策まで幅広くフォローしてもらえる

弁護士は法律問題につき広範に対応できる専門家です。家族信託に係るトラブルが発展し、訴訟が提起されたとしても継続的にサポートをしてもらうことができます。

 

また、相続全般のサポートもしてもらえます。遺産分割など、相続開始後起こり得る問題を事前に想定した対策を練ることも可能です。

 

例えば「遺留分」の侵害は問題となりやすいです。

遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に民法で認められた最低限の相続財産を取得できる権利のことを言い、被相続人の配偶者や子など一定の相続人の生活を保障するための制度をいいます。しかし遺言等によりその分も確保されていない場合、遺留分請求権者は「遺留分侵害額請求」をすることができ、結果として遺言をした本人の思い通りにいかないことも珍しくありません。

そこで家族信託をするときも遺留分を考慮した内容とすることが大切なのです。遺留分の潜脱を目的とした家族信託は無効であるという裁判例もあるので、このような事態にならないように、信託契約の内容は工夫することが必要です。

 

その他種々の問題を防ぐためには幅広い知識を持って臨む必要があるのですが、状況に応じて家族信託のみならず成年後見制度や遺言制度等の併用も検討しつつ、最適な手法の提示が期待されます。

 

各専門家との比較

家族信託に関して利用できる専門家は弁護士以外にもいます。行政書士や司法書士、税理士などです。

そこで各専門家がどのような特徴を持つのか、比較検討していきましょう。

 

行政書士に依頼するケース

まずは「行政書士」についてです。

 

行政書士を利用する場合、一般的には「低コスト」「書類作成の効率・精度が高い」というメリットがあると言えます。

もちろん、依頼先の行政書士によって持っている知識やノウハウ、実績などが違いますので一概には言えませんがおおよそ上のような特徴があると捉えておくと良いでしょう。

なお書類作成に関してですが、行政書士は公的な手続に向けた書類作成が主な仕事内容の1つであるということから一定の信頼がおけると考えられます。

 

他方で、相談・依頼できる仕事内容は限定的です。

書類作成がメインであり、書類作成の範疇を超えた法律相談はしてはいけないと法律で定められています。登記手続や訴訟に関する業務もできませんので、一から専門家にお任せしたいという場合には、途中で別の専門家にも依頼する手間が生じますし、万が一訴訟トラブルが発生すると弁護士に頼らざるを得なくなります。

 

そのため、契約内容などはすでに定まっており、正しく書面化したいという場面で行政書士の利用が適していると言えるでしょう。

 

司法書士に依頼するケース

「司法書士」を利用すれば、「登記手続を任せられる」「低コスト」というメリットが得られます。

司法書士は登記の専門家ですので、特に信託財産に不動産が含まれているような場合には利用を検討すると良いでしょう。また、家族信託に関する書面作成も依頼可能です。

書類作成と登記だけを任せたいという場合であれば、コストを抑えて依頼ができるため費用対効果は高いと言えます。

 

ただし、行政書士と同じく相談・依頼できる仕事内容は限定的です。登記についてはカバーできるものの、広範な法律相談、あらゆる訴訟問題にまでは対応できません。また「認定司法書士」なら簡易裁判所で取り扱う一定の紛争につき訴訟代理人となることもできますが、大きな金額を取り扱うことも多い家族信託ではカバーしきれないケースが多いです。

 

税理士に依頼するケース

「税理士」を利用するメリットとしては、当然、「税務の問題に対処してもらえる」ということが挙げられます。

家族信託は上手く活用することで大きな節税効果が期待できるものですが、一定の場合には贈与税が課税されることもあり、受益者が信託財産に関して毎年確定申告をしないといけなくなることもあります。不動産がある場合にはそこから収益が発生することもありますので、課税上の問題にも配慮しないといけなくなります。税理士がいるとこうした問題にも安心して取り組めますし、どのように節税を図るべきかアドバイスが得られ、そして確定申告等の手続も任せられます。

 

他方、税理士はあくまで税のプロであり、家族信託そのものや法律の専門家ではありません。そのため「どのように信託契約を締結すべきか」「どうすれば親族間のトラブルを解決できるか」といった問題への対処は専門外です。家族信託に強みを持ち、多数の実績を持っているような税理士であれば解決に向けたノウハウも持っているかもしれませんが、法律上はできる仕事に限りがあります。

 

そのため、結局のところ家族信託の手法や手続に関しては他の専門家も利用せざるを得ません。そこで、特に相続税申告の必要性がある場合や、不動産が信託財産に含まれており当該物件の「評価額の計算をしたい」「課税額・納税額の計算をしたい」という場面で税理士に頼ると良いでしょう。

 

弁護士に依頼するケース

以上の専門家と比べた時の弁護士の特徴を見ていきましょう。

まず、大きなメリットとして「相談・依頼可能な範囲に制限がない」ということが挙げられます。行政書士や司法書士、税理士などは、限られた範囲内であれば大きな費用対効果が期待できるでしょう。しかし家族信託のように様々な分野と絡む事案では基本的にフォローできる範囲に制限がないほうが良いです。

また、「トラブルの相手方との交渉をしてもらえる」「訴訟の代理人になってもらえる」というメリットもあります。もちろん受任できる事件の内容に限りはありませんので、何かあったときに最も安心できる専門家であると言えるでしょう。

 

他方、費用は比較的高額になりやすいという難点はあります。そこでまず現状を整理し、何を依頼したいのか、どこまでは自分で対応できそうか、ということを考えてから正式な依頼を検討すると良いです。しかしながらその検討をするにも専門的な知識がなければ難しいと思われますので、まずは相談だけでも弁護士に持ち掛けてみることをおすすめします。

家族信託のご相談は電話やメールのほか、リモートも可能です。お気軽にご相談ください。