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家族信託における信託監督人や受益者代理人の役割とは? 違いや選任の方法を解説

家族信託は、委託者・受託者・受益者の3者から構成されるのが基本形です。一般的な契約に比べて当事者が多く、このことが信託を複雑なものとしていますが、さらに登場人物が増えることもあります。その代表例が「信託監督人」と「受益者代理人」です。これらの人物の選任は家族信託を成立させるために必須とされているわけではないのですが、選任されることが望ましいケースがあるのです。
両者とも似た役割を持つものの、具体的な職務や法的に付与されている権限には違いがあります。この記事で両者の説明をし、どのような違いがあるのか整理していきます。

家族信託における受益者保護の必要性

家族信託は、委託者が自身の財産を受託者に渡し、受託者は委託者と取り決めたルールに従い財産の管理・処分等をしていくことで成り立ちます。
そして受託者のする財産管理等の恩恵を受ける人物が受益者です。委託者自身が受益者となることもあれば、「○○のために財産を運用して欲しい」などと指定された別の人物が受益者になることもあります。

つまり受益者が利益を受けることが家族信託の1つのゴールなのであり、これが果たされず「受託者が不適切な財産運用をしている」「受託者がこっそり財産を横取りしている」という状況があってはなりません。
そこで受益者には受託者に対する各種請求権であるなど、様々な権利が与えられているのです。しかしながら直接財産を保有する受託者が上手くごまかす可能性もありますし、逆に受益者が権利の行使を上手くできない可能性もあります。

そこで別途受益者を保護するための制度として「信託監督人」と「受益者代理人」が存在します

信託監督人には受託者の監視をする役割がある

信託監督人は、受益者が「現に存する場合」に選任することができる者で、受益者保護を目的とし、信託が取り決め内容に従って適切に実行されているかどうかをチェックする人物です。信託財産の取扱いに関しては受託者に権限がありますので、受託者の監視が主な仕事となります。

具体的にどのような権限を持つのか、信託監督人のできることについては信託法に明記されています。
同法によれば、信託に関して受益者が持つ一定の権利につき、一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持つとされています。

条文上は「第92条に定める権利」が対象とされており、同法第92条には「信託行為の定めをもってしても制限することができない受益者の権利」が規定されています。例えば以下のような権利です。

  • 信託法の規定による裁判所に対する申立権
  • 遺言信託における信託の引受けの催告
  • 受託者のした利益相反行為に関する取消権
  • 受託者に対する、信託事務の処理状況に関する報告を求める権利
  • 受託者に対する、信託事務に関する計算書類等の閲覧・謄写請求権
  • 受託者が信託財産に損失を生じさせた場合の損失補填請求権

その他にも様々な権利が規定されています。これらは信託財産の管理等の適切な実行を確保するために受益者に認められた権利ですが、これを信託監督人も行使できるようにすることによって受託者を監督し、受益者を保護しているのです。これらは非常に重要な権利であるため、当事者間の合意があっても制限することはできません。

信託監督人を選任する方法

信託監督人の選任手続については、信託法第131条に定められていますが、大きくわけて2つの方法があります
一つは、信託契約において指定することです。
つまり受託者や受益者を設定するのと同じように、信託契約において「○○を信託監督人とする」旨指定しておけば良いのです。
ただし、たとえ信託契約でこのように指定していたとしても信託監督人に対する拘束力はありません。つまり信託監督人はこの指定を拒否することが可能だということです。というのも、信託契約は委託者と受託者の2者間で締結する契約であって信託監督人は当事者ではありません。そうすると、信託契約において信託監督人を指定しても、その就任を拒否される可能性もある、ということになるので、信託契約において信託監督人を指定する際には、あらかじめ本人の同意を得ておくとよいでしょう。

二つ目は家庭裁判所に対して選任申し立てをすることです。
事前に信託行為にて信託監督人を備えていないケースや、信託監督人を指定しても拒否されるケースもあります。そのような場合、受益者は受託者の行為に不安が生じることもあるかもしれません
こういった状況を解決するため、同法には以下の規定も置かれています。

 

受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合において、信託行為に信託監督人に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより信託監督人となるべき者として指定された者が就任の承諾をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託監督人を選任することができる。

引用:e-Gov法令検索 信託法第131条第4

 

つまり、以下の状況下で事後的に信託監督人を選任することも可能ということです。

  1. 受益者自身で受託者の監督をするのが難しい事情がある
  2. 信託行為にて信託監督人の定めがない、または信託監督人として指定された者が就任を受け入れてくれないもしくは承諾ができない
  3. 利害関係人が裁判所に申し立てた


このときは、契約の当事者ではなく裁判所が選任を行います。 

信託監督人になれる人物

信託監督人は未成年者およびその信託の受託者は信託監督人になれない旨が信託法に明記されています(信託法第137条、第124条)

逆にこれら以外の人物であれば自由に選ぶことができます。個人だけでなく法人も信託監督人になることができます。親の財産を信託財産としており、受託者を長男に指定している場合、将来的に同じ相続人となる受託者の兄弟姉妹などが信託監督人になることも考えられます。
ただここで注意したいのが、受託者との関係性です。信託監督人は受託者の職務を監督する立場であるにもかかわらず、実際の力関係として受託者の方が強い場合、信託監督人が上手く機能しない可能性があります。つまり信託監督人は受託者に対ししっかりと意見を言えたり指導したりできる人物でなくてはなりません。

そこで、受託者に対し外から公平な立場で意見を言える専門家を選任するという選択肢も視野に入ってきます。実際、弁護士や司法書士、税理士などの専門家を信託監督人として選ぶケースが一般的であり、より適切に監視の機能が働くと言えます。 

受益者代理人には受益者の意思決定をサポートする役割がある

受益者代理人は、受益者の持っている権利の一切を代理で行使する権限を与えられている人物です。受益者高齢者あるいは年少者、障害者であるなど、自ら適切な意思表示をするのが困難な状況になる場合に受益者代理人を選任することが多いです

受益者代理人は、広い意味では信託監督人と同じ目標を持っています。いずれも受益者の保護を目指しているからです。
しかし受託者に注目する信託監督人に対し、受益者代理人は受益者に注目します。異なる視点から受益者保護および適切な信託の実行確保を狙っているのです。

そこで、信託法にて与えられている権限にも違いがあります。

①代理権の有無
信託監督人はあくまでも信託が取り決め内容に従って適切に実行されているかどうかをチェックする役割であって、その際の権限行使は自己の名をもって行います(信託法第132条第1項)
他方、受益者代理人は、受益者代理を有しているため、受益者代理人の行為は受益者に効果が帰属します。なお、受益者は、受益者代理人が選任されている場合には、受益者としての権利を自らが行使することについて制限が付されます。
このことから受益者代理人の方が信託監督人よりも受益者に与える影響力は大きいといえます。

 

受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第四十二条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

引用:e-Gov法令検索 信託法第139条第1

 

公平義務
信託監督人には公平義務が課されており、受益者が複数人いる場合には皆を公平に扱わなければならないとされています。
他方、受益者代理人は、代理する受益者を指定した上で選任されるので、代理する受益者以外の受益者がいたとしてもその受益者のために権限を行使する必要はありません。

受益者代理人を選任する方法

基本的な選任の方法は信託監督人と同じです。信託契約にてよる指定です

信託監督人は、このほかに家庭裁判所への選任申し立てという方法が用意されていましたが、「利害関係人からの申し立てにより裁判所が選任をできる」とする規定は受益者代理人には置かれていません。この点大きな違いと言えるでしょう。受益者代理人が選任されてしまうと受益者本人が多くの権利を行使できなくなることに由来します。

受益者代理人になれる人物

受益者代理人は信託監督人に近い性質を持つため、資格に関する規定が共通しています。
つまり、未成年者および当該信託における受託者は受益者代理人になることはできません。
信託監督人と同様、信頼できる親族や弁護士などの専門家に依頼をすることがよいでしょう。

安心して家族信託を行うポイント

信託監督人や受益者監督人の選任は、安全な家族信託のために有効な手段です。しかしその前に、家族信託を始めるにあたり以下のポイントを押さえておくことが大切です。

受託者に適任の人物を選ぶこと

そもそも受託者がきちんと職務を遂行してくれる人物であれば安心です。
そこで、受託者を設定するにあたり適任の人物であるかどうかをしっかりと見極める必要があります。その評価をするとき、委託者から見て「信頼できるかどうか」という観点のみならず、「財産運用に関する知識や能力が十分であるか」という観点も必要です。

例えば不動産を取り扱う場合には専用の知識が必要です。不正のおそれはなくても、これまで不動産運用をしたことがないという方に任せるのは不安が残ります。そのため確かな知識を持っている家族、あるいは専門家に相談して受託者になってもらうように頼んでみましょう。

後継受託者を定める

最初に指定した受託者がしっかりしていても、亡くなるなど何らかの事情により受託者がいなくなる可能性もあります。このときに備えて、後継受託者を定めておくことが大切です。すでに委託者本人も亡くなっている可能性もありますし、事前に信頼できる人物をもう1人用意しておくとより安心できるでしょう。

その他信託契約の定め方に関する詳細は弁護士に相談しつつ検討をしていきましょう。

家族信託のご相談は電話やメールのほか、リモートも可能です。お気軽にご相談ください。